環境学者「田中 章(たなか あきら)」
(静岡市清水区)
「自然や野生動植物と共生できる空間を」
東京都市大学環境学部環境創生学科教授
環境アセスメント学会常務理事
東京農工大学農学部環境保護学科卒
ミシガン大学大学院自然資源環境研究科ランドスケープ・アーキテクチャー修士課程修了、マスター・オブ・ランドスケープアーキテクチャー
東京大学大学院農学生命科学研究科博士課程修了、博士(農学)
パシフィック・コンサルタンツ株式会社、(株)野村総合研究所、(社)海外環境協力センター等で自然環境保全の仕事に従事した後に現職。
2018年8月に静岡市で開催される“アジア環境アセスメント会議in 静岡(AIC2018 in Shizuoka)”の実行委員長
清水市出身
日本平(有度山)からの、清水-折戸湾-三保松原-駿河湾-伊豆半島-富士山という、世界有数のランドスケープとその自然
当方が目指していることを一言で申し上げますと、「自然や野生動植物と心地よい持続的な共生ができる空間や仕組みの創造」です。子供の頃は何よりも自然、海山川、動植物が好きで、有度山、大沢川、折戸湾、興津川、庵原川などの豊かな自然と戯れていました。清水東校時代は生物部に所属しボッテ網にバケツに長靴という格好で、華やかなサッカー部や野球部が練習するグランドの隅っこを通りすぎる、というような生活でした。その頃から、豊かでウキウキするような本来の自然があちこちで汚されたり消失したりすることが気になるようになりました。
カリフォルニアで従事した開発事業で失われる自然を近隣に復元・維持する自然復元プロジェクト
(詳細はhttp://www.yc.tcu.ac.jp/~tanaka-semi2/pdf/tanaka/tanaka2013_01.pdf)大げさですが人生の目的が見えてきたのは、日本で環境アセスメントや環境計画を経験した後に、カリフォルニアで米国の環境アセスメントに従事する機会が訪れた時のことです。日本では開発事業により貴重な自然が失われることが予測されてもそれらを保全する法的義務はありません。したがって開発が進めば貴重な自然はただ消失していきます。しかし、米国やドイツなどの先進国では開発により貴重な自然の消失が避けられないと(環境アセスメントで)予測される場合、消失する自然以上の自然(質と空間)を開発事業者の責任で同じ地域内に確保するという法的義務があることを知りました(これを「代償ミティゲーション」あるいは「生物多様性オフセット」と言います)。まさに目からうろこが落ちた瞬間でした。
それから、様々な人間活動に自然への配慮(特に生物多様性保全)を統合させること(今風に言えばSDG’s)に奮闘してきました。フィールドから政策までの自然共生や生物多様性保全について、その理念、制度、技術、デザイン、評価などについて具体的な方策を考え提案し実施します。そしてこれらの理念と技術を学び実社会に専門家として羽ばたいてくれる若い人たちの教育を行っています。
伊豆半島では自然環境保全と地域経済活性化を両立するための流域バンキング研究を、アカウミガメ産卵地保全をシンボルとして2011年から毎年、勉強会やシンポジウムなどを開催(http://www.yc.tcu.ac.jp/~tanaka-semi/index2.html)。
具体的な研究テーマはちょっと難しくなるので当研究室HP(http://www.yc.tcu.ac.jp/~tanaka-semi/index.html)を覗いていただけたら幸いですが、生物多様性保全、環境アセスメント、定量的生態系評価(HEP)、自然復元、生物多様性オフセット、生物多様性バンキング、ノーネットロス政策、グリーン・リージョン、ビオトープや在来種などによる生物多様性配慮型特殊緑化、屋上緑化、壁面緑化、無農薬・無肥料都市緑化などです。また、これらの分野の国際協力、国際交流を行っています。これらの事柄は多岐に広がっているように見えますが、実は皆、「自然や野生動植物と共生できる空間を」つくりあげていくために不可欠な要素なのです。
バラの無農薬栽培について横浜市百段公園で顧問(アドバイザー)として実証実験。
最後に、今年で第12回になる「アジア環境アセスメント会議」を8月20日から22日まで静岡県立大学と日本平ホテル(バンケット)にて開催します(22日はバスによる静岡~富士山のテクニカルツアー)。既にアジア諸国から100名以上の環境分野の専門家の参加申込があります。世界有数のランドスケープと自然、そこで育成された風土、歴史、文化を有する静岡県、静岡市をぜひ海外の環境専門家たちに知ってもらいたいと思っています。
http://jsia.net/3_activity/koryu/Japanese/schedule.html
アジア環境アセスメント会議ポスター