特集

キラリ!静岡県人
2013/12/02掲載
語り部・かたりすと 平野啓子さん

 

今月は、「語り部」の平野啓子様(沼津市出身 静岡県人会会員)です。日本ユネスコ国内委員会広報大使でもあられます。



平野啓子

平野啓子 ソウル公演「ちっちゃなかみさん」とトーク

ソウル公演「ちっちゃなかみさん」とトーク




「ああ、富士山。ああ、竹取物語。」

語り部・かたりすと・元NHKキャスター 平野啓子


「竹取物語」のラストシーンに富士山が登場する。だから、必ずいつかそれを「語り」で上演しよう!と決めたのは、25年前。私が、初舞台で約10分の「蜘蛛の糸」を暗誦した直後だった。
古今東西の名作名文を暗記して舞台などで上演するのが私の生業である。四半世紀もやっていればたいていの名作を語っているのだが、数百に上る私の語り作品の中、「竹取物語」は最初のころに、この長い作品を、もうレパートリーにすることに決めていたことになる。子どものころから、SFのスペースオペラが大好きだった私。竹取がその日本版の最たるものと思い、当初はその興味がきっかけだった。
学校で習ったのは冒頭と途中の箇所だけ。全容は、絵本も含め子供向けに現代語訳され簡略化されたもので知っていた。それらは、かぐや姫が昇天するところで終わっているものが多かった。だから、そのつもりで原文を声に出して読み進み、約一時間の素読の最後に差し掛かった時に目を見張った。
「その山を富士の山とはなづけける。その煙いまだ雲の中へ立ち上るとぞ言い伝えたる。」
日本最古の物語文学が「富士山」で締めくくられている!なおさら「やらねば!」と。富士山は活火山で、平安時代以前も何度も噴火し、しょっちゅう煙が立っていたそうだ。しかし、噴火の煙は竹取では帝が手紙を焼いたからということになっている。帝が、天に一番近い山でかぐや姫からの手紙と不老不死の薬を燃やしたい、というと、ある人が、「駿河の国にあるなるやまなむ、この都も近く天も近くはべる」と答える。このことから、大昔より、日本で一番高い山、そして、駿河が京都・奈良に近いと認識されていたこともわかる。
現代、首都東京と京都・奈良の都のちょうど真ん中ほどにある静岡県。交通手段も発達し、平安時代よりもっと都に近い。歩いて鑑賞はもちろん、いろいろな乗り物でいろんな角度からいろんなスピードで富士山を眺めるのも楽しい。日本人は本当に富士山が大好きだ。新幹線で、静岡圏内を走っているときにパシャっとシャッターの音が聞こえたら、それはたいてい富士山を撮っている。また、飛行機国内線内で「上空から富士山が見えます」などアナウンスがあれば、身を乗り出して窓の外をのぞきこむ。空いているときは、席移動する人も多く飛行機が傾くのではないかと思うほど。宇宙飛行士毛利衛さんは、なんと宇宙船の中から、うっすらと見える日本列島の中に、はっきりと雪を頂いた富士山をご覧になり、「月に帰ったかぐや姫は、日本を見下ろす時に、富士山を目印にするだろう」と、私の「竹取物語」の語りをお聴きくださった後に、コメントしてくださった。
そのコメントとともに、2013年6月22日、私の語り生活25周年記念公演で「竹取物語」を上演し終えた直後、富士山世界遺産登録の第一報が日本中を駆け巡った!三保の松原も一緒に!羽衣伝説の一つが枝分かれして日本最古の物語文学となった「竹取物語」。なんという縁だろう。心より、世界遺産登録のお祝いを申し上げたい。そして私は、この物語を、全世界に「語り」で発信していくつもりだ。もう、やるしかない!と思っている。


【職業】
語り部・かたりすと
【役職】
大阪芸術大学放送学科教授
武蔵野大学非常勤講師(伝統文化研究)
日本ユネスコ国内委員会広報大使
中央防災会議首都直下地震対策WG委員
日本語大賞審査員
ほか、団体役員等

【受賞歴】
1997年 第52回文化庁芸術祭大賞受賞
    ギャラクシー賞奨励賞受賞
2003年 第24回松尾芸能賞優秀賞受賞
2008年 徳川夢声市民賞受賞
2010年 文化庁長官表彰受賞
など多数

【活動内容】
早稲田大学卒業後、東京都歴史文化財団職員を経て、「NHKニュースおはよう日本」キャスター、大河ドラマ「毛利元就」語り(多美役で役者としても出演)、「義経紀行」の語り、教育テレビ「日本の伝統芸能鑑賞入門」聞き手など多くの番組で語り手、司会、ナレーションを務める一方、舞台やテレビで名作・名文を暗誦。国内外で日本語の美しさや日本文化を紹介。語りで震災復興応援、地域振興なども行う。今年、語り生活25周年で記念公演を展開。コラムやエッセイの執筆などの活動も行っている。語りのCD、DVD、著書多数刊行、インターネット配信もされる。語りを生かした歌のCDも刊行され、発売やituneで配信中。過去には文部科学省中央教育審議会委員、日本ユネスコ国内委員会委員などの公職を歴任する。



平野啓子平野啓子

平野啓子平野啓子



・しだれ桜公演(着物)
・「再会」歌
・伊豆の民話「波切り地蔵」や「稲むらの火」「エルトゥ-ルル号物語」など災害を語り継ぐ公演。
・語り「星に還った“少年”」芥川龍之介作「奉教人の死」より
※語り「星に還った“少年”」をお聴きになり篠塚英子先生(お茶の水女子大名誉教授)が「語り」の威力 というタイトルで、《金融財政ビジネス》巻頭言に執筆してくださいました。



平野啓子 北京公演「竹取物語」

北京公演「竹取物語」


 

 

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